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ブルーロケッツ応援記
〜チームでつかんだ王座・第56回黒鷲旗全日本男女選抜バレーボール大会〜

 キャプテン・大村がレフトから放ったスパイクが、豊田合成コートに突き刺さる。得点に「25」が刻まれ、キャプテンは高く突き上げた拳をスタンドの応援団に向けた。
 「苦しい戦いが続いたリーグから、ずっと応援してくれた人たちがいたから勝つことができた。選手もスタッフもファンも、みんなでつかんだ勝利です。」  
 リーグ中には見ることができなかった笑顔が、黒鷲の舞台でようやく弾ける瞬間が訪れた。

準決勝進出をかけた予選リーグ最終戦。対するはプレミアリーグの覇者・サントリーサンバーズだった。
 「僕たちはリーグ7位で、入れ替え戦まで経験した。もう失くすものなどないし、上位のチームに対して『1つでも食ってやろう』と臨むだけですよ。入れ替え戦ほどのプレッシャーなんて、ここにはないですから。」  
 王者を相手に3−0のストレート勝ちを収めた後、静かに大村は言った。負けられない戦いを経て、チームは確実な進化を遂げていた。
  準決勝の相手はJTサンダーズ。プレミアリーグでは勝利している相手であり、試合前には楊監督も「チャレンジャー精神を持って臨めなくなってしまうことが怖い」と余裕が油断につながることを危惧していた。  
 しかし、そんな心配など無用であることを試合開始早々から見せつけられる。高橋のサーブが冴え渡り、今大会好調のファイディがバックアタックを含む攻撃を次々と決める。終盤の勝負どころではブロックが飛び出し、第1セットは25−23で先取する。

  得点以上に展開には余裕があるように思われたが、短期決戦は 何か1つのきっかけで流れを失うこともある。第2セットにはまさにそんな場面が訪れた。
 18−11と7点リードしたところから、サービスエースやブロックなどで5連続失点。7点あったはずのリードはわずか2点になった。リーグ中であれば、このままズルズルと後退していたかもしれない。しかしここで、大村が目の覚めるようなスパイクをJTコートに見舞い、漂い始めた悪い流れを断ち切る。続く高橋のサーブから、今度はブルーロケッツが連続得点を挙げ、終わってみれば25−17と大差をつけて第2セットも連取した。
 第3セットもその強さが衰えることはなかった。菊地やファイディのブロックで得点し、大村のサービスエースでマッチポイントに到達。最後はJTのミスを誘い、3−0のストレート勝ちで決勝進出を決めた。

 強さを感じたのは、見ている人間だけではない。対戦していた相手チームの選手が一番よくわかっていた。試合後、JTのエース・直弘はこう残した。
 「今のNECは本当に強い。リーグ中は何かが足りない感じがあったけれど、この大会ではすべてがうまく機能しているし、チーム全体がうまく回っている。」


 初優勝に向け、抜群の攻撃力を持つ豊田合成トレフェルサと対した決勝戦。
 序盤こそ、豊田合成・甲斐のサーブやファビアノの攻撃に苦戦を強いられたが、逆に中盤以降はブルーロケッツがファビアノ、盛重といった豊田合成の攻撃陣をブロックで封じる。一気に流れをつかんで第1、第2セットを連取し、優勝に向けたカウントダウンが始まった。


 V・プレミアリーグでは、悪い流ればかりが漂っていたころは、レシーブやブロックに連携が生まれずに、小さなミスがどんどん連鎖してさらに悪循環に陥ることが多かった。しかし、黒鷲旗では常に安定したプレーのもとで、ブルーロケッツらしいコンビバレーが随所で展開され、コートからは選手たちの声が響き続けた。
 こんなバレーが見たかった。そう思わせるような、ブルーロケッツのバレーだった。


 入れ替え戦から這い上がってきたばかりの選手たちは、4年ぶりの優勝を笑顔で称え合った。
 ただ1人だけを除いて。  
 喜びの輪の中央で、1人、涙を流し、決勝でトスを上げた脇戸に抱きつく高橋の姿があった。試合直前のアクシデントで出場ができなくなり、急遽コートに入ることになった脇戸への感謝と申し訳なさ、決勝戦で優勝を決するコートに自分が立っていない歯がゆさ、でも、勝利したことへの喜び。そのすべてが入り混じって、思わず、涙が流れた。



▲ NEC本社正面入口

 リーグのリベンジはリーグでしか返せない。それでも、「ここからまた一歩ずつ、新しく始めよう」と歩み始めたチームにとって、この勝利が持つ意味は確かにあるはずだ。
 「選手やスタッフだけでなく、苦しいときも変わらぬ応援をしてくれたファンの人たちがいたから、ここで優勝することができた。来年はもっと喜んでもらえるように、チーム一丸となって頑張ります。」  
 来季への決意とともに、大村の声が響く。
 「たくさんの応援、ありがとうございました!」
 長かった今シーズンも、ようやく終焉のとき。苦しかった日々も、これから迎える日々も、いくつもの困難はあるけれど、少しだけ、この優勝の喜びを味わいたい。

(取材・文:田中 夕子/写真:大谷 欣也)


黒鷲賞
(最高殊勲選手賞)
大村 悟
若鷲賞
(最優秀新人賞)
金子 隆行
ベスト 6
(アシックス賞)
大村 悟、ファイディ・ノルディン、金子 隆行
ベストリベロ賞 古賀 幸一郎