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ブルーロケッツ応援記
〜 第57回黒鷲旗 新たな一歩を刻むための「準優勝」 〜

 今シーズンも味わった雪辱を晴らすための場所。そして来シーズンへの布石。三大タイトルの1つである「黒鷲旗」には、いくつもの意味合いがある。ある者にとってはスタートであり、ある者にとってはこれがラスト。それぞれにとって、そしてチームにとって“節目”の大会が、今年も幕を開けた。

 今回の黒鷲旗は、大会直後に五輪最終予選を控えているため、全日本候補選手は出場しない。そのため、各チームがリーグ中とは異なるメンバーで戦いに臨む。
 たとえばここで負けたとしても「ベストメンバーでないのだから仕方ない」という言い訳が立つかもしれないし、ここで勝ったとしても「それは本物じゃない」と屁理屈をつける人もいるかもしれない。だが、勝つことに飢え、「来季こそ」の思いを抱くブルーロケッツにとって、目的は1つだけ。楊監督は言う。
「とにかく勝つこと。今組めるベストのメンバーで、優勝を狙います」

 もちろん、昨年の覇者としてのプライドもある。易々と負けるわけにはいかない。  
 予選リーグを2位で通過し、決勝トーナメント進出後も、サントリーサンバースを打破し、準決勝では堺ブレイザーズと対戦。堺は地元・大阪での開催で多くの声援を味方につけ、若手選手が勢いを繰り出す。リーグ中とはメンバーの違いがあるとはいえ、決して侮れない相手であることは間違いない。

 
 しかし、今大会ではキャプテンマークをつけて臨んだ大角が、リーグの悔しさを晴らすかのように序盤から「壁」となり、堺の攻撃を阻む。
「若い選手が頑張っているから、自分も負けないように頑張らないと。サーブが悪い分、ブロックでは貢献しようと思っていた」
  堺のエンダギ、西尾をブロックで仕留め、さらに菊地も鉄壁のブロックで続く。22−17とブルーロケッツがリードを広げ、難なく第1セットを手にするかと思われた。だが、ここから堺の反撃が始まる。リーグ中にも脅威を放ったエンダギのブロック。伊藤、西尾と前衛で並ぶ際は、攻撃側にかかる圧力も大きい。トスを上げる高橋も「エンダギのブロックは確かに怖い」と言う。そこで互いの駆け引きが生じる。高橋はレフトからの攻撃を選択した。
「(レフト側に飛ぶ)エンダギを避けるのは第一だけれど、ライトにもブロックがついてくるのが見えたので一か八かで勝負した」

 
 あと3点を取るために選んだ策ではあったが、エンダギのブロック力が上回り、点差はみるみる縮まり、気づけば22−23と逆転を許してしまう。リーグ中であれば、このままズルズルと負けパターンにはまってしまうのだが、この試合は違っていた。

「悪い流れを1本で断ち切ってくれた。あそこで決めてくれたことが大きかった」
  試合後に高橋が安堵とともに振り返った「あそこ」は、23点目を決めた前田のスパイクだった。ライトからのクロススパイクがきれいに決まり、23−23とすると、そのままジュースへと突入する。しかし最後まで動じることはなく、逆に堺のコンビミスを誘って29−27、第1セットはブルーロケッツが制した。  
 第2セットも第1セットに続いてジュースの攻防が繰り広げられたが、ここでも前田がエースとしての役割をしっかり果たし、27−25でブルーロケッツが連取。ジュースの末に2セットを連取した勢いと力はその後も衰えることはなく、終わってみれば3−0のストレート勝ちで昨年に続いての決勝進出を決めた。

 

 連覇に向け、決勝で対するは今リーグの覇者・パナソニックパンサーズ。予選リーグでは0−3のストレート負けを喫している相手だが、「準決勝までと違って相手のセッターに堅さが見られた。十分に勝機はあったはずだけれど、ウチの選手も堅くなってしまった」(楊監督)。ミスが目立ち、リズムをつかめないままに第1セットを失い、第2セットもパナソニックが優位に試合を運ぶ。
 そこで「雰囲気を変えてほしかった」という理由から、楊監督は金子に代えて細川を、高橋に代えて菅を投入した。
「金子のほうがレシーブはうまいけれど、ブロックだったら(自分のほうが)できるかなと思っていた。システムがちゃんと働いて、全体が落ち着けばいいと思って入った」  

 途中交代で求められた役割をそう分析した細川が、言葉どおりのプレーでチームに流れを引き寄せる。交代直後に見せた2本連続のブロック。10−18と離された状況から、3点差まで追い上げ、パナソニックに流れかけていた会場全体の空気も一変する。
「本来はスーパーエースではない選手が打ってきているわけだから、そこはブロックでも負けるわけにはいかないでしょ」
  細川のブロックで流れを少しずつ引き寄せはしたものの、前半のビハインドが響き、第2セットもパナソニックが連取する。しかし、細川、菅の投入を契機に、ようやくブルーロケッツも本来のスタイルを取り戻し始めた。

 第3セットは、前田のサーブから菅のブロックなどでいきなりの5連続得点。三上のブロックや、相手の隙をついた絶妙なフェイントでさらに得点を重ね、25−17でブルーロケッツが奪取する。続く第4セットも、大舞台にもひるむことなく、むしろ好調さが増していく三上がサービスエースを決めるなど、第3セットの勢いをそのまま持続させ、ブルーロケッツがリードを奪う。
 さらに「センター線や、前田とのコンビにはまだ課題があるが、全体のトス回しはとてもよかった」と楊監督も合格点を与える菅のトスワークが冴える。
 終盤はパナソニックのブロックに苦戦を強いられながらも、「トスで高橋さんにはかなうとは思っていないけれど、雰囲気がパナソニックに流れていたので、こっちに引き戻せるように、走り回って声を出そうと思っていた」という菅の落ち着いたトスワークで、第4セットもブルーロケッツが連取。どちらが王者となるのか。フルセットの攻防が始まった。  
 菊地のサーブが効果的に決まり、いきなりの3連続得点。そのまま一気に、ブルーロケッツが走るかと思われた。しかし、「5セット目は何が起こるかわからない。苦しい場面で、相手はフェリッペがよく決めた。うちの選手たちもよく頑張ったけれど、最後はその差が勝敗につながったと思う」と楊監督が振り返ったように、ブロックの上から、横から自由自在に攻撃を仕掛けるパナソニック・フェリッペの前にあと一歩が及ばず、第5セットを制することはできなかった。



 0−2と絶体絶命の劣勢から追い上げながらの準優勝。だが、一度は勝利をつかみかけたかと思われた場面もあっただけに、選手たちも悔しさをあらわにする。
「1、2セットは勢いに負けたけれど、そこから持ち直してこちらがペースを握っていた。勝つことができなくてとても悔しい」(前田)
「最後にチームが1つにまとまることができたのはよかったと思うけれど、パナソニックよりも力が足りなかったからこの結果になった」(大角)

 悔しさに変わりはない。しかし、シーズン中とは確実に違う悔しさであり、得られたものがあったことも確かだった。そして、リーグ中にはできなかった、雰囲気を変え、再びリズムを取り戻すことができたということも、1つの成果であった。細川は言う。
「あの展開、あの流れで、よくフルセットまで持っていくことができたと思う。自分としてもそれなりに仕事ができたと思うし、準優勝だけど満足もしています」
 そして最後に、楊監督はこう残した。
「大舞台で強い選手、弱い選手というそれぞれの違いも見えたし、各自が克服すべき課題も明らかになり、それぞれが何をしなければならないかがこの大会でよくわかったと思う。そういう意味では、ただ勢いで突き進んで勝った去年の優勝よりも、この準優勝は実りのあるものだと思います」  

 終わりは新たな始まりでもある。悔しさを受け止め、個々の課題を見出し、次のステップへ向かうためのドアを開ける。これまで築いてきた礎の上に、また新たな土を載せ、足場を固め、確かな地盤をまた築く。
 1つの区切りを経て、これからを育むためのステージへ。ブルーロケッツは、改革のときを迎える。


(取材・文:田中 夕子、写真:大谷 欣也)




試合詳細
◇ 5月4日      NECブルーロケッツ  3 - 1  サントリーサンバーズ      


試合詳細
◇ 5月3日      NECブルーロケッツ  0 - 3  パナソニックパンサーズ     


試合詳細
◇ 5月2日      NECブルーロケッツ  3 - 1  順天堂大学     



試合詳細
◇ 5月1日      NECブルーロケッツ  3 - 0  警視庁